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夫婦間のコミュニケーションについての認知行動療法は、かつては行動契約と呼ばれる方法が主流でしたが、現在は、様々なコミュニケーション戦略が出てきています。

家族合同面接では、まずお互いに思っていることを出し合ってもらい、以下の内容について学んでもらい、家族で問題になっていることについて、「自分だったら、どのように貢献できるか?」という点について話し合っていくことになります。つまり、共通のゴールを持つということです。

 

1回の話し合いで結論を出さず、落ち着いているときに話しあう

家庭内で起きる問題を一度の会話で解決することは難しい。なるべく、何度も話し合える環境を作っていく

悪い例)
妻:「休みの日には、朝からそうじとかして、午後はゆっくりしたいんだけど…」
夫:「いや、平日は仕事で疲れてるから、ゆっくりさせてよ」
妻:「でも、そんなこと言ってたら、何もできないじゃない」
夫:「いや、休日は休みのためにあるもんだろ?」
妻:「だから、片づけとかは早く終わらせてゆっくりしたいんじゃない」
夫:「どうせやるんだから、どっちでもいいじゃないか」
妻:「私は、面倒なことは早く終わらせておきたいのよ」
夫:「自分でやるぶんはいいけど、おれは寝かせといてよ」
妻:「そしたら、私ばっかりやることになるでしょ」

良い例)
妻:「休みの日には、朝からそうじとかして、午後はゆっくりしたいんだけど…」
夫:「いや、平日は仕事で疲れてるから、ゆっくりさせてよ」
妻:「でも、そんなこと言ってたら、何もできないじゃない」
夫:「確かにね。僕としては、後でやるから、午前中は寝てたいんだけど」
妻:「うーん。いっつも、この話になると、結論がつかないのよね」
夫:「そうなんだよね。また、ゆっくり話そう。」
妻:「うん。わかった。もっと、イライラしてないときなら、いいアイデアが出るかもね」

悪い例では、話し合いがヒートアップして、冷静な話し合いにならなくなっている。よい例では、話し合いがヒートアップする前に、話し合いを終え、次の話し合いへと繋げている。

 

相手の感情は変えられない

言い合いになると、相手の意見や感情を変えようとあらゆる試みをとろうとしてしまう。時には大声を出したり、家から出て行ったりなどの行動で、自分の意見を伝えようとする。変えられるのは、自分の考えと行動だけという意識が大切になる

悪い例)
夫:「この書類、郵便局に出しておいてって何度も言ってるじゃないか」
妻:「ごめん。今日も忙しくて出せなかったのよ」
夫:「期限が決まってるんだから、時間あるでしょ?」
妻:「私だって、色々やることあるんだから。あなただって、書類出すぐらいできるんじゃない?」
夫:「時間ある時はあるけど、家に書類おいてるし…。とにかく、やっておいてよ」
妻:「結局、郵便局に行くのが面倒なだけなんじゃない?」

良い例)
夫:「この書類、郵便局に出しておいてって何度も言ってるじゃないか」
妻:「ごめん。今日も忙しくて出せなかったのよ」
夫:「期限が決まってるんだから、時間あるでしょ?」
妻:「そういう言い方されると、私はきついんだけど。」
夫:「悪い悪い。でも、ちゃんと出しておいてよ」
妻:「出せるときは出すわ。あなたも、時間があれば出しに行ってね」

悪い例では、否定的なことを言われたときに、妻が報復しようとしている。言い換えれば、夫を攻撃することで、夫の態度を変えようとしている。一方、良い例では、自分の感情を表現し、相手に対する要求の形で会話を進めている。
アサーティブな会話においては、「相手が、○○という態度だから、私は××という行動をとった」ということをやめ、「私は○○という感情を感じ、××という行動を選択した。」という形をとる必要がある。

 

行動だけに言及して人格・態度について批判しない

言い合いがひどくなると、相手の行動ではなく、人格・態度について批判したい衝動にかられる。このような場合は、どの行動を話題にしているのかを明確にする必要がある

悪い例)
妻:「茶碗を流しに持っていったら、油物とそうじゃないものは分けておいてって言ってるでしょ」
夫:「洗いだしたら、別に変わらないじゃないか。どうせ、洗うんだし」
妻:「洗う手間が全然違うんだから。私の身になって考えてよ」
夫:「だいたいさぁ、細かいんだよ。なんでも、完璧にできないんだって。」
妻:「あなたは、大雑把すぎるし、私の身になって考えてないのよ」

良い例)
妻:「茶碗を流しに持っていったら、油物とそうじゃないものは分けておいてって言ってるでしょ」
夫:「洗いだしたら、別に変わらないじゃないか。どうせ、洗うんだし」
妻:「洗う手間が全然違うんだから。私の身になって考えてよ」
夫:「時間はそんなに変わらないって。」
妻:「全然違うのよ。それに、落ちにくいものもあるのよ」
夫:「ふーん。じゃあ、今度、俺が試してみるよ」

悪い例では、夫・妻の双方ともが、人格・態度について非難をしてしまっている。良い例では、一つの行動・一つの出来事をめぐって話を進めている。

 

指示は具体的に

指示が具体的でないと人はどうしていいかわからない

悪い例)
「今日は、忙しいから家のことまかせた」「ちょっと、なんとかしておいてよ」

良い例)
「今日は、忙しいから食事の準備と子供の様子をみておいて」「ちょっと、相談にのってよ」

 

ポジティブな形でのお願いをする

して欲しくないことはすぐに見つかるし、お願いしやすいが、それではどうすればいいのか分からない。できるだけ、「○○をして欲しい」という形でお願いをする

悪い例)
「私宛の郵便物は勝手にみないで」「勝手にテレビのチャンネル変えないで」
「私に文句ばかり言わないで」

良い例)
「私宛の郵便物を見る時は、私に一声かけて」「自分の見たい番組があるときは言って」
「私に意見がある時はやさしく言って(/落ち着いているときに言って)」

 

相手の攻撃的な態度と意見を分けてとらえる。

相手の態度と意見を一緒に考えてしまうと、感情的な反応しかできなくなってしまう。例えば、大きな声で、「俺に連絡しろと言っているじゃないか」と言われたとする。この際の、意見について賛成できる・賛成できないという判断をし、大きな声や強い口調に対しては、「大きな声で言われると、びっくりする」という意見を持つことができる

 

すぐに反応しない。必要であれば休憩をとる。

会話の中では、自分の感情や意見がめまぐるしく変わるため、自分の感情について気をつけていないと感情的な発言をしてしまう。感情的な反応・行動をとりたくなる場合は、一呼吸置いて、自分はどんな気持ちなのか、相手に何を求めればいいのかを整理して言ってみると伝わりやすい。
また、感情的な反応のしやすさは自分の体調によっても変わってくる。そのため、気持ちが落ち着かない場合は、休憩をして、意見をまとめることも大切になる。その場合、「ちょっと、考えをまとめるから時間をもらう」「ちょっと、考えを整理するから待って」という言葉を使って休憩をすると、スムーズに休憩をとりやすい

 

批判の対象になっている内容を明確にする

悪い例)
妻:「あなたが、いつも帰りが遅いから、私がこんな風になるのよ」
夫:「でもさ、俺は仕事をやってきてるんだし、帰ってきたらきついんだ」
妻:「あなたはいつも、そればっかりでしょ。それが駄目なのよ」
夫:「そういわれても、しょうがないじゃないか! じゃあ、お前がかわりに仕事をするか?」

良い例)
妻:「あなたが、いつも帰りが遅いから、私がこんな風になるのよ」
夫:「そうか。帰りが遅いと何が嫌なの?」
妻:「だって、二人で話し合わないといけないことが沢山あるでしょ。あんまり遅いと、あなたはきつそうだし、なんか気をつかうのよ」
夫:「そうか、だから早く帰ってきて欲しいわけね」
妻:「そう。そうしたら、二人でゆっくり話せるでしょ」
夫:「でも、今はなかなか早く帰ってこれないんだ」

詳しくきいた結果、建設的な内容であれば、批判を受けいれ、どうしていけばいいか考える。批判の内容が建設的でなければ、批判に同意しないことを伝える。批判に対する理解を示す。
・批判に理解を示す。
ⅰ部分的な同意:「私は、確かに○○だった。」「そういう、一面もある。」
ⅱ可能性に同意:「そうね。そうなるかもしれない。」
ⅲ価値観に同意:「あなたが、それを大切に思うのは分かる。」

悪い例) 建設的な内容
妻:「子供がまだ小さいんだし、早く帰れるように上司に言えないの?」
夫:「なんで、そんなこと俺が言わないといけないんだ。それは、俺の問題じゃないよ。」
妻:「でも、あなたが遅く帰ってきて、家のことは私に押し付けるのよ」
夫:「そんなこと言われても…」

良い例) 建設的な内容
妻:「子供がまだ小さいんだし、早く帰れるように上司に言えないの?」
夫:「確かに、上司に相談するのは、一つの考えかもね。言ってはみるけど、上司が無理っていうかもしれないけど…そのときは、ごめん」
妻:「とにかく、言ってみてよ。時々は、早く返してくれるかもしれないし」
夫:「分かった。ありがとう」
悪い例) 非建設的な内容
妻:「もっと、早く帰ってこれる会社にしてよ」
夫:「いきなりは、難しいよ」
妻:「なんで?」
夫:「すぐに仕事はやめれないし、次の仕事もすぐに決まるか分からないし」
妻:「私だって、いっぱいいっぱいなのよ」
夫:「俺だって、いっぱいいっぱいなんだから」

良い例) 非建設的な内容
妻:「もっと、早く帰ってこれる会社にしてよ」
夫:「いきなりは、難しいよ。一体、どうしてほしいんだ?」
妻:「もっと、私の家での仕事を手伝って欲しいのよ。あなたは、私や子供に対して全く協力的じゃないじゃない」
夫:「確かに、仕事が忙しくて、そういうふうな所もある。」
妻:「いつも、そうやって、言い訳ばっかりしてるでしょ。私とか子供とかに全然時間をさいてくれないじゃない」
夫:「そうだね。君が、家族で過ごしている時間を大切にしているのは分かる。でも、会社を変えるのは難しいよ。」

 

その他に役に立つこと

・批判されていると感じたら…
ⅰ何が起こっているかが分かるまでは、行動を起こさない。
ⅱ何を批判されているのかを、たずねる。
ⅲ批判されていることが明確になれば、それが建設的かどうかを確かめる。
・批判に対しては、「でも」「だって」「どうせ」を使って返事をしない
・「あなたは、○○と考えていて、(そして)、私は、☓☓と考えている」と伝える
・「私は、○○をするから、××はしてよ」という言い方をする

 

タイムアウト

タイムアウトとは、自分の怒りがコントロールできないときに一時的にその場を離れ、自分の気持ちを落ち着けるテクニックです。タイムアウト期間は、自分の気持ちを落ち着ける時間なので、なるべくリラックスできるような時間にします。タイムアウトは、タイムアウトを取る前に夫婦でタイムアウトの手続きを話し合っておく必要がある。事前に決めておいたほうがいい事柄は、タイムアウトの時間(期間)、その時間どこにいるか、何をしてすごすかです。また、タイムアウトをとる際は、タイムアウトすることをアサーティブに伝える必要がある。

悪い例)
妻:「あなたのね、そういう言葉に私は傷ついてきたのに…全く反省がないのね」
夫:「俺だって、色々と勉強もしたし、色々実践しるのに、そんな言い方はないよ」
妻:「だって、あなたは、全然変わらないじゃない!」
夫:「もう、イライラするから、頭を冷やしてくる(タイムアウトすると言ってもよい)」
妻:「そうやって、私から逃げるつもり?」
夫:「逃げるわけじゃない。」
妻:「じゃあ、どうするの?」
夫:「イライラするのを解消するために、パチンコに行ってくる」
妻:「なにそれ!逃げるのと何が違うの?」
夫:「だから、頭冷やすんだって。うるさいな」

良い例)
妻:「あなたのね、そういう言葉に私は傷ついてきたのに…全く反省がないのね」
夫:「俺だって、色々と勉強もしたし、色々実践しるのに、そんな言い方はないよ」
妻:「だって、あなたは、全然変わらないじゃない!」
夫:「もう、イライラするから、頭を冷やしてくる(タイムアウトすると言ってもよい)」
妻:「そうやって、私から逃げるつもり?」
夫:「これは、タイムアウトって言ってならったやつだよ」
妻:「そう言って、あなた、どうせパチンコに行くんでしょ?」
夫:「パチンコにはいかないよ。前もって約束してたとおり、家の周りを一周したら帰ってくる」
妻:「ふーん。それで? それで、この話は終わりなの?」
夫:「タイムアウトは、気持ちを落ち着かせる時間だから、頭冷やしたら、戻ってくる」
妻:「そういって、話をやめるつもりなんじゃない?」
夫:「少し落ち着いたら、またこの話に戻ってくる。いま、話したら大声出すかもしれないし、落ちついたら、ちゃんと話すよ」
妻:「そう。だったら、いいわよ。約束だからね」

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