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以下の記事は、 2015.7.08 に修正しています。

前頭葉検査のFABの解釈や取り方を解説してくれている本は少ないです。

以下は、以前の職場で使っていたFABの解説です。
FABを全く知らない方は、以下の参考PDFを御覧ください。

http://www.treatneuro.com/wp-content/uploads/fab2.pdf

http://yoshiya-hasegawa.com/pdf/test/manual.pdf

以下は、検査名が上記PDFと一部違いますが、内容は大体同じです。

検査1 類似

これは、WISC,WAISに「類似」という課題がありますが、同じものです。

この問題に正答できないということは、WISCでいうところの6歳よりも認知機能が低下していることになってしまいます。
この問題の正答は、2つのものの共通性をたずねることで、2つのものに共通する上位カテゴリーを答えさせます。
つまり、上位カテゴリーにまとめあげられるかということを見ています。

この検査で大切なのは、典型的な誤り方を知っておくことです。

典型的な誤り方をしない場合は、他に何かあると考えられます。

バナナとみかんの共通点を聞かれて、「両方黄色」と答えた場合
→これは、両方の特徴を捉えているけれど、上位概念に上げきれていないので間違いになります。
ただし、共通する特徴をあげているので、WISCの簡単な問題では正解になります。

同じように、テーブルとイスの共通点をきかれて、「両方木でできている」も間違いです。

これも、同じような部分的な特徴だからです。

前の職場のFABは、たんすと机でしたが、

たんすは物をしまう…、机もものをしまう…という風に統合できない上に、机の方に??な反応をすることもありました。

 

検査2 語流暢 Word fluency

Word Fluencyにはカテゴリー型(動物の名前をあげる)と、語頭音型があります。

これに解離がある場合は、なにかあるんでしょう。
「か」で始まる単語を探したとして、

かさ、かえる、からし、からいも等はよくあるけど、

カンガルー、かや、カシューナッツとか出てきたら、数は出てきているけれど、ちょっと変だと疑ったほうが良いです。

こういう人は、日常生活で喚語困難があったりするかをチェックするとよいかもしれませんね。

検査3 ルリアの系列動作

これは、行動プログラムともいいます。

この検査でみているものは、一連の連続する動作を、一つのタスクとして保持できるかという感じかです。
いわゆる慣れが生じるためには、一連の動作を一つのまとまりとして認識して、保持する必要があありますが、それができるかどうかをみています。

失敗するパターンとして多いのは、一緒にやっているときも少したどたどしく、検者のパターンをチラ見しながら、「あっこうやった。」とか修正をするパターンですね。
一緒にやることはできるとしていいと思います。つまり1点です。
でも、一人でやらせると上手くいきません。
パターンを保持できていないから。です。

K-ABCをやったことある方なら、この検査は視覚性の短期記憶なのかな?と思うかもしれません。

実際、僕もそうかもと思っていた時期があります。

視覚性の短期記憶で最も一般的なのは、corsi tapping span ですね。

数唱(Digit Span)の視覚版です。WMS-RやCATに出てきます。

実は、K-ABCとFABではグーの作りかたがちょっと違います。

FABのグーは、人差し指から小指のラインが机に対して水平になるように作るります。

K-ABCのぐーは、人差し指から小指のラインが机に対して垂直になるように作ります。

FABの元論文には、この記載はないのですが、多くの人は、こうしているみたいです。
そのため、グーの時に、間違いやすくなるのです。
これは不思議ですが、そうなります。
そのため、これは動作が模倣できるかという問題を含んでいるのです。
高齢者の特にアルツハイマー型認知症では、構成障害のために動作模倣が障害されますが、
実はその問題が反映されている印象です。

この検査以降の検査は、何回か教示をすると、慣れが生じやすくなります。

そのため、教示通りにやって、一回でもミスをしたら、失敗とみなす方ことが正解です。

例えば、お手本を3回みせた時点で、えー分からん、ちょっともう一回やってと言ってきても、してはいけません。

ついついやってしまいたくなりますが。

検査4 葛藤指示

この検査のポイントは、相反する行動です。 前頭葉機能が障害されると、真似を抑制できなくなります。

人間は、本能的にはついつい真似をしてしまうのですね。

その勝手に真似をすることを抑制できるかを診ています。

これができないとなると、かなり認知症らしい印象になります。
指で叩く方もいますが、個人的には手を叩いてやることが多いです。

理由は、レビー小体型認知症の方は、ぼうっとしている人がいて、そういう時は、手を叩いたほうがいいのかなと思うからです。
以前は、ペンを持たせてやっていました。

この問題で、よくある所見としては、約束の確認があります。
教示が終わった後で、どうするんだったっけ?と聞いてくる反応です。
これはは、近時記憶の問題から、進んで短期記憶の障害が出てきた際にでるような気がします。
わりとアルツハイマー型認知症に多いような気がします。

また、「ちょっと緊張してしまって…」と追加で言い訳をする場合もあります。
この反応は、アルツハイマー型認知症の取り繕いの反応であることが多いです。

初期診断には、こういう所見も大切になります。用紙にメモしておきます。

間違いのパターンとしては、途中で教示を忘れてしまって、同じように叩くことが多いと思います。
その意味で、4と5の検査は短期記憶も反映してしまっていますね。

それは仕方がないことです。

この検査で、葛藤を抑制できずに叩く場合は、前頭側頭葉変性症のFTDとか、
進行性核上性麻痺等のかなり重い部類の前頭葉の障害があるかもしれません。
FTDでも、初期はこの課題に難なく通過します。

検査5 Go/No-Go

この検査が、FABの中で最も山場だと思います。

ちなみに、かつてADHDの人は、この課題ができないと言われていた時期がありましたが、それは正確ではありません。
ADHDでも、点数上は、満点になることがほとんどです。
子どもでもこれが引っかかる場合は、知的障害をまずは疑うほうがいいと思います。
確か、ADHDは反応として失敗はないが、EEGとかを取ると、反応遅延が起こっているとうのが正解だったと思います。

ちなみにですが、CAT(標準注意検査)に付属のCPTでは、反応抑制についてmsの単位で測定しますが、
それでもパフォーマンスの低下がないADHDの方が多いです。

ADHDとは、特定の状況下でしかパフォーマンスが落ちないというのがピュアなADHDだと思います。

話は戻りますが…
この課題は、認知症を疑われる高齢者にやると、結構引っかかります。

この検査の最も面白い点は、保続がみれることです。

検査5をこの通りにやると、一番多い間違いは、検査4と同じ叩き方をするものです。
つまり、2回には1回叩き、1回には2回叩きます。

これは、完全に検査4の保続の所見なのです。
検査5の途中で分からなくなって、途中から検査4と同じ叩き方になる例もあります。

保続は、認知科学の領域からみると反応コストの増大に伴い、タスクを変換できなくなるという問題です。

神経心理的には、保続は概念や行動が、新規のパターンに置き換えられないという現象と捉えていいです。

これは、アルツハイマー型認知症でも十分にあります。
アルツハイマー型認知症でこれがあると、取り繕いがあるため、さも緊張したり、最近やってないから…といって間違ったような感じを装いますが、
実は内心、パニクっていることがあります。

検査6

これが、失敗する場合は、前頭葉の問題ではなくて、むしろ他の疾患である可能性が高いです。

神経内科的な病気を疑う必要があります。

FABのカットオフは、実はよくわかりません。論文を引用しての目安はいくつかあるようです。

ただ、健常成人ならほぼ満点近くとらないとおかしいです。
せめて、Word Fluencyで落とすぐらいです。

ただ、高次脳機能障害の方は、このくらいでは引っかからない場合も多いですね。

特に軽度な遂行機能障害の人は、これでは引っかからないです。

認知症の人はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症だろうがFABは落ちてしまいます。

MMSEと比較してという観点が必要だろうと思います。

FABが10点以上=MMSEで20点以上 という感じです。

 

追加の検査として…ですが

前頭葉の検査としては前頭側頭葉変性症のFTDをどうするか?という問題がありますし、

他の認知症でも前頭葉が落ちた場合は、検査を追加するといい場合があります。

applause sign
「今から、私がやるとおりに叩いて下さい」と教示して3回叩きます。
この時、4回くらい叩いたらこのサインがあることになります。これは、前頭葉の検査です。

あとは、手を膝のうえにおいて、ピースとか色々なサインをしてみます。 その時に被験者が真似をしたら、「真似をしないで、膝の上から手を動かさないでくださいね」と再教示して、何種類かやってみます。
これも、一応、ちゃんとした手続きがありますが、臨床的にはこれで足りると思います。
詳しくは、森悦朗 先生が書いておられます。

この2種類の検査は、前頭葉の検査です。

参考:正しいMMSEの取り方、認知症鑑別への基本

 

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