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強迫症の認知行動療法も、少しづつ新しい考え方が出てきています。ここでは、そんな考え方を紹介していきます。

暴露反応妨害法以外の方法もある

まず、もっとも大きいものは、これでしょう。最新の認知行動療法では、暴露反応妨害法以外の方法や、暴露反応妨害法のもっと効率の良い方法が提案されてきています。その方法とは、行動実験や制止学習による暴露になります。これらは、確かに暴露という方法を含んでいますが、全く今までとはやり方が違います。

 

そもそも、暴露するとどうなるの?

まず、暴露をしていくとどうなるのでしょうか。机が汚いと思って触れない人が、暴露を経験すると何を学ぶのでしょうか? 以前は、『机に触ることで、出て来る不安に馴れる』と考えられていました。しかし、最新の研究からは、『机に触っても、恐ろしいことが起こらないということを学ぶ』ということが分かってきました。

これは、机に触れる用になった人がどのような考えになっているかを詳しく聞けばわかります。「机に触って、感染してもいいんですか?病気になってもいいんですか?」と尋ねると、答えは「NO」です。つまり、机に触れるけれど、病気になることは嫌なのです。しかし、「机に触っても感染しないことがわかりました」といいます。

つまり、暴露をする経験は、不安をなくしていくことでもなく、不安に馴れることでもなく、恐れていることが生じないという体験を学ぶということだったのです。

 

強迫行為はしてもいい?

暴露反応妨害法は、強迫行為を禁止する方法です。そのため、多くの強迫症の人たちが、強迫行為を我慢して治そうとしていますが。これは、とても大きな間違いです。確かに、歴史的に見れば、強迫行為を阻止しなかった時代の暴露は上手くいきませんでした。では、なぜそれが上手くいかなかったのでしょうか?

それは、強迫行為を行ったまま暴露をすると、『強迫行為をしたから、不安な状況でも大丈夫なのだ』という条件を学んでしまうからです。例えば、鍵の確認が酷い人に鍵を空けたまま家の周りを一周する暴露をしようとしたとします。家をでるととても不安になりますね。「私が家を一周する前に、泥棒が入るんじゃないだろうか?」と考えたりします。

しかし、家の前で、キョロキョロと左右を確認して家を一周したとします。この場合、この人は何を学ぶのでしょうか?家の周りを一周できるようになったとして、『鍵はかけなくても、家の周りを一周する前に、あたりに変な人がいない場合(確認をすれ)ば、一周しても大丈夫だ』ということを学んでしまいます。これでは、せっかくの暴露をしても効果がないのですね。

このように、せっかくの暴露をしても何らかの理由付けをしてしまうので、『確認をしないで外出しても、安全だ』ということが学習できないのです。しかし、こういう方法であっても、外出はできるようになります。なぜでしょうか? 条件つきだけど、外出をしても泥棒に入られないことを学習していくからですね。

このような事例から学ぶことは…

・強迫行為をしても暴露をした方が良くなる

・強迫行為は、強迫行為をしたために不安が起きなかったと誤学習してしまう恐れがある

ということです。

 

強迫行為をしながら、暴露をするコツ

先程、暴露とは、『○○をしなくても、自分が予測することが起きないことを学ぶ方法』だと説明しました。そして、強迫行為を行ったまま暴露をすると『○○をやりさえすれば、自分が予測することが起きない』と誤って学習してしまうのでした。では、次のステップとしては、どうしたら良いでしょう?

次のステップは、『強迫行為をしてもしなくても、結果は変わらないことを学ぶ』ということです。つまり、手洗いをしてもしなくても、日常生活における感染のリスクは実はさほど変わりません。確認を0回にした所で、何かの見逃しのエラーが発生する確率はほぼ変わらないのです。この強迫行為をすることで、最悪な事態が防げたという考え方を崩していくのです。

 

「○○になってしまった」「起こってしまった」ではなく、「予想が外れた」が大事

暴露という体験を強烈にするためには、「恐ろしいことが起こってしまった」と考えたほうがよいです。しかし、制止学習による暴露の知見からは、『自分が、起こると思っていた予想が外れた』という体験を重ねていくほうが大事だと言われています。

そもそも、強迫症の人は強迫症にかかる時間が長くなると、「汚い/綺麗」「危険/安全」ということにこだわりすぎてしまい、本当はなにが怖いのかわからなくなってきます。そのに、「なにが怖いんですか?」と聞かれると、はっとする方が多いです。『え、なんで怖いんだっけ?』と。実は、この「なにが恐れているのかをつかむ」という作業をしていないために、せっかく暴露をしても上手くいっていない場合があります。

暴露をすることで、『自分が、予想していたことと随分違うことが目の前で起こっている』と自覚することが、暴露の効果を最大にします。

 

制止学習による暴露へ

この制止学習による暴露は、暴露療法の効果を最大限にするための一連の研究から確率されました。当初は、他の不安症にだけ効果があるだろうと言われましたが、2016年の論文で、おそらくは強迫症にも有効であろうと言われています。

今後の認知行動療法は、暴露反応妨害法だけではなく、制止学習による暴露へと変わっていくと考えられます。

 

 

 

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