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強迫性障害(OCD)の家族は、基本的には巻き込みの対象となっている場合が多い。巻き込みとは、母親に洗ってもらわないと綺麗だと思えない、夫に大丈夫だと言ってもらえないと安心できないといった、他者を媒介して行う強迫行為のことだ。

巻き込みの対象となるのは夫婦だとパートナー、家族だと母親になることが多い。この巻き込みが生じると、介護負担がとても大きくなる。

OCDの方への支援をする上で家族への介入は、必須になる。家族の協力なくして、OCDに立ち向かうことはできない。基本的に、家族は、患者本人に対する認知行動療法家になってもらう。認知行動療法の専門家は、万人に対して専門家でなければならないが、家族は自分の家族に対してだけ専門家であればいいので、少し肩の力が抜けるかもしれない。

家族がまず、やるべきは本人の症状を把握することだ。強迫性障害は、強迫観念と強迫行為が交互に起こる。患者本人の強迫観念は何なのか、強迫行為は、回避行動は何か?を調べることになる。

例えば、強迫観念:「スイッチを消し忘れているんじゃないか?」
強迫行為:スイッチを何度もつけたり消したりして確認する、外出先で、家にいる母親に電話をかけて、大丈夫かを確認させる(巻き込み)
回避行動:外出するときは、必ず家に誰かいるときに外出する

などだ。この場合、「スイッチを確認せずに外出する」ということが条件によりエクスポージャーになったりならなかったりすることが分かる。その条件とは、家に誰か居るか・居ないかになる。このように一つ一つを丁寧に把握していくことが大事だ。

家族でよく多いのは、手洗い等が長いことは知っているが、どんな手順で行なっているか、何が気になっているのか?(強迫観念)が掴めていないことだ。家族が強迫行為をつかめていると、かなりいいと思う。
次には、上のように症状がまとめられるようになると、実際にどう対応すればいいかが見えてくる場合が多い。例えば、上の例のように、巻き込み確認の電話がかかってきた場合を想定してみる。

恐らく、通常は…
本人:「ねえ、家の台所のスイッチ消えてる?」
母親:「消えているよ」
本人:「ほんと? ちょっと、一回消して、もう一回つけて、それから消して、消えるか確認してよ」
母親:「はいはい、したよ。何もなかったよ」
本人:「本当? 何もおきない?」
母親:「何も起きないよ。大丈夫。スイッチを付けてても、何も起きないって。電気代があがるだけよ」
本人:「家事になったりしない?」
母親:「しないよ。」
本人:「電気が漏れたりしてたら?」
母親:「漏れてないよ。さっき確認したし。漏れてても大丈夫だって」

のような会話になる。
この場合、母親は保証をしようと何度も巻き込み強迫につきあっている。強迫性障害患者の確認は、健常人の確認とは質が違うので、大丈夫だと何度言っても安心感を得にくい。むしろ、大丈夫だと保証すればするほど、症状は強くなることが精神医学的に分かっている。また、心理学的な観点として、大丈夫を連発すると、投げやりに言っているように聞こえて、むしろ、発言に信頼感がなくなってくる。

そして、様々な説明を行うことで、安心してもらうように説得している。多くの場合、このように説明を増やしていくことで、不安をあおってしまう。

関わり方のパターンにはいくつかあるが、私が家族向けに説明するのは
・ソクラテス的質問法による心理教育
・動機づけ面接法(選択肢を二つ提示する)

の二つを家族向けに説明することが多い。

ソクラテス的質問法とは、ギリシャの哲学者ソクラテスが、相手に質問をすることで、相手に何かを悟らせる方法である。このやり方の逆は、説得だと言える。

相手に質問することで、何を分かってもらうかというと、
・「大丈夫だと言って欲しい」と要求することは、強迫性障害の症状であるということ
・大丈夫だと言っても、長い目でみると安心できないこと(すぐに同じような不安が出てくる。次からはもっと、大丈夫と言わないと安心できなくなる)
の二つだ。

例えば、こんな風な会話にしてみる
本人:「ねえ、家の台所のスイッチ消えてる?」
母親:「私が、消えているって言ったら、どうなる?」
本人:「安心する。ねえねえ、消えてる?」
母親:「安心するよね。そしたら、その後は?」
本人:「大丈夫になるよ。」
母親:「今まで、そうなってきた?」
本人:「……なってないけど…。でも、言ってもらったら、安心するから」
母親:「私が、消えているって言って、落ち着いた後はどうなると思う?」
本人:「あとで、やっぱり気になるようになる…?」
母親:「そうそう。今まで、そうだったよね? 電話してきて、その後で、また電話してきたりしたよね?」
本人:「うーん。確かにそうだった。」
母親:「これは、強迫性障害の症状だから、そうなるって、先生が言ってたでしょ。」
本人:「そうだけど…。ねえ、スイッチ消えてる?」
母親:「私が、スイッチが消えてるって言ったら、強迫性障害はどうなるの?」
本人:「治らんかもしれんけど…気になるから。ねえ、お願い。」

このように展開していく。このように会話を展開していくと、確認までの時間が伸びていくため、実は少しエクスポージャーがかかる場合がある。(強制的にだが)
ある程度は、このような会話で落ち着く場合がある。

もう一つの戦略は、動機づけ面接法だ。これは、色々な側面があるので全部は解説できない。よくやるパターンは、二つの選択肢を挙げて、その選択肢のどちらを選ぶかを考えてもらう。

あげる選択肢は、
・強迫行為を行い。今の安心感は得られるが、強迫行為に長く時間を使ってしまう
・強迫行為を辞め・今の安心感は得られないが、強迫行為に使う時間を減らせる

この時のコツは、例え、強迫行為を行なったとしても、前者の選択肢を選んだという自覚を持ってもらうことだ。

例えば、こんなふうになる。(先ほどの続きから)

母親:「私が、スイッチが消えてるって言ったら、強迫性障害はどうなるの?」
本人:「治らんかもしれんけど…気になるから。ねえ、お願い。」
母親:「確認して、今はすっきりする生き方と、確認をがまんして確認している時間を減らす生き方のどっちがいい?」(選択肢の提示)
本人:「えー。確認はして、確認している時間を減らす方がいい。」
母親:「二つのうちのどちらかしか、選択肢はないよ。どっちがいいの?」
本人:「確認は、したい…だって、気になるし…。」
母親:「じゃあ、今はすっきりして、確認をずっとし続ける生き方ね」(少しいじわるな念押し)
本人:「確認をずっとするのは嫌だ。だって、安心して外出できないし」
母親:「ほんとね。外出するたびに、こんなに気になってたら、本当に辛いと思うよ」(辛いことへの共感)
本人:「ほんと、これがあるから外出できなくて、高校も辞めたし」
母親:「そうよね。色々、無駄にしたものもあったしね」(辛いことへの共感)
本人:「でも、今日はきついから確認したい。 ねえ、消えてる?」
母親:「じゃあ、確認をずっとし続ける方でいいのね?」
本人:「今日は、きついからいい。認知行動療法やった方がいいってのは分かるけど…今日はきつい」
母親:「認知行動療法やった方がいいって思ってるのね。色々と真剣に考えているのね」(変化することへの願望を拾う)
本人:「いや、考えてるよ。ほんと、強迫治したいし。でも、今日はだめ…」
母親:「そう、分かった。じゃあ、スイッチ消えてるか見てくるね」

このように、会話の中で、少し意地悪な念押し、辛いことへの共感、変化することへの願望を拾うなどのこと(動機づけ面接法では、もう少しちゃんとした言い方がある)をすれば、例え最終的に強迫行為を行なったとしても、認知行動療法へのモチベーションや意識はあがる。

そして、サンプルの会話は挙げないが、確認を我慢したら、最大級に褒める。
強迫行為をしたいという衝動は、蚊やアトピーで痒くてたまらないのに、かくのを辞めなさいと言われているような感じに近いと言えば想像しやすいかもしれない。
その強迫行為を我慢するというのは、とても賞賛されるべきことだと思う。

 

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カテゴリー: 強迫症(強迫性障害)

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