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新しく、書き直しました。

参考:強迫症(強迫性障害)に対する認知行動療法

 

 

強迫性障害(強迫症)は、強迫観念と強迫行為の二つの症状によって構成されている病気です。強迫観念とは、「手が汚れたんじゃないか?」「スイッチが付いているんじゃないか?」「知らない間に誰かを怪我させたんじゃないか?」などのような考えです。強迫行為は、手を洗う、確認する、お祈りを唱えるなど、強迫観念を追い払う行為です。強迫症に陥ると、この二つの症状の悪循環から抜け出せなくなってしまいます。

強迫症の種類はたくさんありますが、代表的なものは、汚れたものに触ったら手を洗いたくなる洗浄強迫(汚染恐怖)、なんでも確認しないと不安になる確認強迫、知らない間に誰かを傷つけてしまったかもしれないと気になる加害強迫、縁起が悪いことができない縁起強迫、考え・イメージが頭のなかに浮かんで消えない純粋強迫観念、物事の正確性や対称性などが気になる正確性の強迫・対称性の強迫などの種類があります。他にも、自分の顔が醜いと信じこみ美容整形を繰り返す醜形恐怖、頭の毛を抜き取ってしまう抜毛症、他の人にはゴミと思えるものをため込んでしまうため込み症などの症状も強迫症の仲間です。

強迫症の治療には、SSRIと呼ばれる薬物療法と、認知行動療法(行動療法)が併用されます。薬物療法だけで治療するメリットは、お薬を飲むだけで治療が完結するという点です。認知行動療法は、自分で自分を治療するという姿勢が必要だからです。反対にデメリットは、薬物療法だけで治療を行い十分な寛解状態に至らない方がいることでしょう。また、強迫症は一度寛解状態になったとしても、再発の危険性を持っています。再発しそうになったときに、認知行動療法に取り組んでいると、再発のリスクは下がります。認知行動療法のメリットは、薬物療法に反応が乏しいとされる症状にも効果がある点です。反対にデメリットは、認知行動療法に継続的に取り組んでいく姿勢が求められることです。

強迫症に対する認知行動療法としては曝露反応妨害法(暴露儀式妨害法)が推奨されています。これは、強迫症の方が苦手な刺激に対して直面する(暴露)と、その後に強迫行為をしない(儀式妨害)を組み合わせた方法で、Exposure and Ritual Preventionの頭文字を取ってERPと呼ばれることがあります。様々な認知行動療法の方法がありますが、長く研究され、効果も実証されている方法は、ERPになります。

認知行動療法の最初のステップは、病気について知ることです。これを心理教育と呼びます。まずは悪循環になっているという事実を観察することから始めます。『何度も手を洗う。満足した洗い方をした後すぐは、ほっとできるけれど、またしばらくすると汚れた感じが出てくる』『何度も確認して大丈夫と思うんだけれど、しばらくすると大丈夫かな?と思ってしまう』のように、強迫行為をいくらしても、自分の目的が達成できないということを自覚することをまず行います。強迫行為は、意味が無い行為(儀式)だから、辞めたいと思えるまで、観察します。カウンセリングでは、これらの体験に基いて、強迫症についての説明や症状の仕組みを、説明していきます。

次は、自分が嫌な物、状況、場所などに0~100で点数をつけていきます。これを不安階層表(ハエラキー)と呼びます。例えば、トイレに行った後に手を洗わない 80点、家を出るときに鍵を確認しない 70点、神様にお祈りをしない 90点などです。なるべく、0~100点に10点刻みで作っていくと治療が進めやすいでしょう。強迫症の方の多くは、洗浄強迫(手洗い)の他に確認強迫を持っています。これらは、テーマ別にまとめるとよいでしょう。例えば、洗浄の不安階層表、確認の不安階層表などです。治療が進めば、この不安階層表に書いてある項目の点数が下がってきます。例えば、トイレに行った後に手を洗わない 80 点→ 50点などのように変わってきます。また、もっと治療を分かりやすくするために、強迫行為にかける時間、家の水道代なども調べておくと良いと思います。治療を続ける一つのポイントは、治療の効果を目に見える形で記録していくことです。

不安階層表が書き上がったら、50点~100点の間の課題に挑戦しましょう。不潔恐怖ならば、汚いと思っている場所に触る。確認ならば、スイッチをわざと確認しない、振り返らない、チェックしないでその場をやり過ごす。縁起強迫ならば、不吉な数字をわざと言う、バチが当たるような行為をするなどをします。この時、最低でも30分は強迫行為をせずに、この状況に耐えるようにします。より丁寧にやりたい人は、5分毎に不安の強さを100点満点で評価し、記録していくといいでしょう。

最初にERPをするときは、とても勇気が必要になります。「悪化しないだろうか?」という気持ちもあるかもしれません。カウンセリングでは、この際の疑問に答えたり、お手本を見せたり、一緒にERPを行なったりします。一緒にERPを行うのは、強迫症の方の多くは自分一人でERPができないためです。治療がうまくいけばどのような感覚になるかと言うと、「全てが汚れてしまった、私は重大な病気に感染した、泥棒に入られた、家が火事になった、私には天罰がくだる、人を殺してしまった……でも、それでいい。」という感覚になります。

ERPは、できれば毎日継続すると効果があがります。そして、色々な刺激に対してやってみることで更に効果があがります。例えば、家のトイレのスイッチ、リビングのスイッチ、ストーブのスイッチ、コンロのスイッチ等です。時々は、まったく不安にならない刺激もあります。言い方を変えれば、ERPをした刺激が不適切な場合です。しかし、それはERPをしないと分かりません。沢山ERPをすれば、ERPが上手くなるのです。しっかりと寛解状態をキープできる方は、自分がどんな刺激を避けていて、どんな刺激は大丈夫かをしっかりと分かっておられる方です。
ERPをしているのに、良くならないという場合は、ERPの際の刺激が適切でない場合がほとんどです。無意識のうちに、本当に避けている刺激を回避している場合もあります。カウンセリングでは、手順がちゃんとしたものになっているか、刺激は適切な設定になっているかを確認する作業も行います。

参考:強迫性障害の治療の最初のステップ:強迫性障害の持つ悪循環とは?

参考:強迫症(強迫性障害)の強迫観念と強迫行為の分類とタイプ:タイプによる治療戦略

 

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カテゴリー: 強迫症(強迫性障害)