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今回の記事は、当事者向けの記事でもあり、家族の対応のヒントになる記事でもあります。

 

強迫性障害は、病気だから治療する。

手洗い、確認を治せと言われるから治療する。

…こんな風に漠然と考えていると、なぜ強迫性障害を治療する必要があるのか?とう壁にぶち当たる時があります。

 

「手洗いは、30分くらいなのですが、治したほうが良いのでしょうか?」

「確認は2回ほどに減りましたが、もう少し治したほうがいいんですよね?」

「どうやったら、不安を大丈夫なようにできるのですか?」

のような質問をよくされます。

 

そのようなときによく出す例えを紹介します。

 

恐らく、多くの人が、電車、バス、飛行機、自動車などの公共交通機関を利用すると思います。

しかし、公共交通機関は時として事故にあいます。

電車も脱線することがあるし、自動車もよく事故にあいますね。

それは、リスクよりも利点(ベネフィット)の方が大きいからです。

 

ここに、「車は危険だから絶対のらない」と決心した方がいるとします。

「車に乗ればいいじゃないか」と周囲の人は説得します。

しかし、その人は「車にのって絶対安全だと証明できるなら、車に乗るよ」

と言い返します。

 

皆さんには、この人はどううつるでしょうか?

「もったいない」と思いますか?

それとも、「車にのると危険だから、この人の言うことは正しい」と思いますか?

 

強迫性障害の方は、この危険(リスク)を実は高く見積もる傾向にあることが分かっています。

1%でも、事故にあう可能性があるならば、車には乗らない を翻訳すると

1%でも、菌が感染する可能性があるならば、手を洗う

1%でも、泥棒が入る可能性があるならば、鍵を確認する … というようになっていきます。

 

逆に言えば、100%安全であるというのは世の中にはないのですね。

しかし、その100%の安全・安心を求めているのです。

 

強迫性障害を治療しないことのメリットは、安全を守れたかのように錯覚できるということです。

暴露儀式妨害法をしなければ、汚れることはないし、確認しなければならないような不安状況にも直面しません。

そうやって、完全な安全・安心を求めていきます。

 

しかし、世の中には完全な安全・安心はないので、ちょっとした不安にとても敏感になっていくのです。

 

これが、聖域に閉ざされた世界に生きている状態です。

聖域の中に入れば、自分は汚れ無くて済むと思っています。

しかし、それは真実ではありません。

参考:強迫性障害の世界:聖域を作って身を守ることが上手くいかない理由

 

一方、強迫性障害を治療しないデメリットは、行動に沢山の制限がかかることです。

手洗いが5分で終わるかもしれません。しかし、5分の手洗いを気にして過ごしているとも言えます。

 

強迫性障害の方の中には不安から逃げることに注目してしまい、その結果として、行動上の制限が増えていることに気がついていない方がいらっしゃいます。

 

リスク0を求めて彷徨い、様々な行動の制限が出てくる生活を続けるか、リスクが0にならないことを受け入れて、行動の自由を手に入れるか …これは、選択になるでしょう。

 

そして、家族対応としては、この二つの選択肢を常に目の前に置いておくということが重要になります。

これは、一つの動機づけ面接法になります。

参考:強迫性障害(強迫症)の家族がしてしまっていること・できること(再編集)

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