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不安・嫌悪の刺激に対して感受性が高い

強迫性障害の方は、社交不安障害や、パニック障害などの不安障害の人に曝露を行う場合に比べて暴露を嫌がるという印象があります。特に、社交不安障害・パニック障害の方はむしろ積極的に暴露している方の数も多いです。ただし、その暴露の手続きに問題があって上手くいかない例もあります。しかし、認知行動療法をしらずに暴露を行なっている例も多く、パニック障害なんかは、誰からも教わっていないのに、暴露をしている方も多いと感じます。

強迫性障害の方が単に暴露を嫌がるのは、その刺激に対する感受性が何らかの形で高まっているのだと感じます。文献的な根拠はないのですが。

 

不安と嫌悪で大分様相が違う

ブログでは、不安・心配と嫌悪の情動で強迫性障害のタイプが違うという内容が出てきます。これは、かなり議論されている点です。臨床上も暴露の工夫の仕方を考えていく必要があります。洗浄強迫、確認強迫、縁起強迫は不安の方が多いです。中には、嫌悪の方もいます。一方、正確性の強迫、数数えの強迫、対称性の強迫などは嫌悪の方が多いです。こちらには不安の方はほぼいないです。

臨床上困るのは、嫌悪のタイプでしょう。確かに、嫌悪のタイプの人は認知行動療法の反応性が悪い印象があります。というか、そもそもやり方を工夫しないと改善していきません。

特に確認強迫では、顕著にその差が出ます。例えば、「スイッチを消し忘れたのではないか?」とスイッチを確認する際に、自然と不安の感情が出てくるタイプは、最悪のストーリーなどのイメージ・エクスポージャーを行わなくても、エクスポージャーになってしまいます。一方、嫌悪の方は、イメージ・エクスポージャーは必須ですし、その内容もしっかりと考えておかなければ、暴露としては失敗してしまいます。

また、嫌悪タイプの確認強迫の方は、確認した時の、「何か納得した感じ」みたいなものでスッキリする感じが生まれます。これは、Just right feeling(まさにぴったり感覚)と近いのかもしれません。そのため、指先の感覚や、確認が終わった瞬間を明確にしようという行動をしがちです。こういう場合は、終わりが明確にならない確認の方法で確認してもらうだけでも、モヤッとした感じが出てきます。

 

リスクを過大評価してしまう

これは、強迫性障害の認知療法で有名なポール・サルコフスキーがしてきしていることです。例えば、『手がトイレの汚れについてしまった可能性が1%でもあるとしたら、手を洗うかどうか?』と言われた時に、『1%ぐらいだったら、いいでしょ』と思うのか、『1%もあるなら、洗わなきゃ!』と思うかの違いです。

強迫性障害の方はリスクが0%でないなら、そのリスクを0%にしようとしてしまいます。そして、リスクを0%にしようと必死になるあまりに、行動の制約が増えていくのです。

 

なぜ強迫行為を行うのか?

強迫観念と強迫行為のパターンは無数にあります。しかし一方である種の法則性も指摘されています。これは、何らかの結びつきがあるのでしょう。例えば、手洗いが止められない洗浄強迫の人にアルコール除菌を進めても、いまいち綺麗になった感じがしない時があります。一方で、手洗がやめられずに、アルコール除菌まで行う方もいます。

強迫観念を打ち消すために、どんな強迫行為を選択するか? という問題は非常に不思議なものがあります。なぜ、紫外線照射等では駄目なのか? 煮沸消毒では駄目なのか? と思ったりもします。これは、強迫行為が「儀式行為」と呼ばれる所以でもあると思います。つまり、その行為をした時に、強迫観念が薄れたないし、薄れるような感じがする行為が強迫行為に選ばれるのです。

 

この強迫観念と強迫行為の結びつきを考えていかなければ、治療は上手くいきません。手の感覚で確認している人に、目で見て確認してもらうのも一つの暴露の方法になります。一方、「目で確認したから大丈夫」といくら声をかけても、「手で触って確認するから…」と手で確認したい衝動に襲われるでしょう。周囲からみれば、「なぜ?」と思いますね。

この例が顕著に出るのが、洗浄強迫の汚れている・汚れていないの区別です。これは全く理論的ではありません。例えば、汚れている床でも、「これは◯◯だから綺麗なはず」などのように、自分なりの理屈があります。

 

強迫行為をすれば、不安・嫌悪が消えるのか?

強迫行為を納得のいく形で十分にすれば、一瞬だけ消えます。しかし、中には不安感・嫌悪感が一瞬も消えない人もいます。これも不思議な現象ですね。不安・嫌悪感が消えないとおっしゃる人は、非常にクリアな思考の状態を求めている場合があります。純粋強迫観念というよりも雑念強迫/雑念恐怖と呼ばれている状態です。 侵入イメージは特に嫌ではないけれど、ずっと付きまとうので煩わしいという感じでしょうか。

 

確認できなかったことが頭から消えない

これは、メンタルチェッキングとは少し違います。メンタルチェッキングは、頭の中で明確に確認をしているからです。暴露を行なっていると、このようなことを言われる方がいます。こういう場合は、大抵、暴露の程度が弱かったりします。

この現象は、どちらかと言えば、強迫観念に近い現象のような気がしています。

 

考えただけで危険

これも、ポール・サルコフスキーが指摘していることで、thought action fusionとも言われます。考えたら、それが起こってしまったことと同じ価値を持っているということです。

例えば、会社にいるときにふと、「家の鍵をしめたかな?」と考えたとします。そうすると、考えただけで現実は何も変化していないのに、「鍵を閉め忘れてしまった」という行動と同じ価値を持ってしまうのです。それまで、全く平気であったのにです。

 

発達障害と強迫性障害

自閉スペクトラム症のこだわりと強迫性障害の関係はよく出てきます。自閉スペクトラム症のこだわりは、簡単に言うと「食わず嫌い」という形でよく出てきます。「◯◯は、汚いから触りたくない」などです。そして、暴露に対してかなりの抵抗を見せたり、あるときにふっとできるようになったりします。強迫性障害は本質的に強迫行為が止められない病気なので、自閉スペクトラム症のこのような訴えとは違うのでしょう。

一方で、心理療法としては同じように暴露を行っていきます。自閉スペクトラム症の注意の研究では少数ながらトップダウン処理が優勢でボトムアップ処理が劣勢になるかうまく機能していないという指摘があります。実際、自閉スペクトラム症の方にこのように説明するとよく分かってくれるので、ある種的を得ているのではないかと思います。

そのため、暴露をした際に、その刺激から出てくる情動にアクセスしづらい傾向があります。例えば、ザラザラした床に手で触って、「どんな感じですか?」と訪ねても、「よく分かりません」「触っています」のように応えることがあります。

ただ、難しいのが、自閉スペクトラム症がなくてもJust right feeling等で、トップダウン処理が優勢な方もおられるんですね。そういう方は、おおよそ特定不能の広汎性発達障害と診断を受けています。しかし、よくよく話を聞くと、確かに変わっている方なのですけれど、コミュニケーションの質的異常が明確にないことが多いんですね。

なので、強迫性障害や不安障害を治療する上では、発達障害かどうかよりも、どんな認知プロセスが優勢で、不安・嫌悪を処理しているかを見てくのが大切だと感じています。

 

ADHDについては、時々、『不注意だから、確認したくなるんじゃないか?』ということが言われますが、これは違うのではないかと思っています。というのも、ADHDを持つ強迫性障害の方は、確認を沢山するけれど、不注意のために、結局忘れ物をしたりすることが多いのです。つまり、ADHDと強迫性障害というのは全く別の疾患なのです。当たり前だとは思いますが。

ただ、ADHDの方の場合は、衝動をコントロールする問題が厄介になります。強迫観念が浮かんでから強迫行為を行うまでの時間的スピードが速い方がいます。そういう場合は、それに対してマインドフルネスなりの追加の方法で練習をしていく必要があります。

 

発達障害が合併すると確かに難治例になる可能性が高いですが、強迫性障害という点に絞って考えると、工夫をしていけば、曝露反応妨害法は効果を上げることが多い気がしています。

 

典型的でない強迫性障害

実は、これが非常に難しいところです。この種類の強迫性障害は、統合失調症とつけられていたり、抗精神病薬が用いられていることが多いです。確かに、中には精神病圏の色彩を持っておられる方もいます。一方で、奇妙な強迫行為を持ちながらも、人格水準が低下しなかったり、妄想・幻覚が出ない方もいます。

色々な経験を総合すると、こういう方たちにも曝露反応妨害法は有効である場合が多いです。このような方は、曝露反応妨害法を行っても悪化することはないです。

一方、完全に統合失調症の周辺症状として強迫行為が出ている場合や、知的障害を持っている方の強迫行為は厄介だったりします。このような場合は、治療の全体を考えていく必要があります。

 

 

どこからが強迫行為でどこまでが強迫行為ではないのか?

治療上は、強迫行為の可能性があるものは全て妨害していきます。これは曝露反応妨害法の鉄則です。しかし、中には妨害せずにあっさりと消えてしまう強迫行為めいたものも幾つかあります。例えば、周囲への質問や、ネット等で調べる等です。これらが、真に強迫行為であるケースもありますが、あんまり妨害せずによくなる場合もあります。

このように、ある行為が強迫行為なのかどうかは、実は治療してみないと分からないことがあります。

 

強迫性障害の方が持つ心性

強迫性障害の方は、自分の嫌悪・不安をなくすために、講演会等で矢継ぎ早に質問してくる方が多いです。中には、我は我はと質問を繰り返す方々もいます。そして方法を聞いたら、納得して、次の質問をしてくる方が一定数います。

これは、同じ内容ならば正確性の強迫と言えそうですが、そうでもない場合もあります。

ただ、中には患者さんの傾向として、質問の答えを得るとスッキリしてしまい、その後に繋がらない方もいます。いわゆる認知行動療法マニアの方もいます。認知行動療法マニアで寛解していれば良いのですが、そういう方は方法を知ることが目的になってしまい、治療をすることが目的になっていないことが多いです。恐らく疑問点を解消するということばかりに主眼がおかれてしまい、それ以外のことが目に入らなくなってきているのではないかと思います。

 

確立した治療法があるのになかなか広まらない・寛解に至らない問題

曝露反応妨害法は、強迫性障害に対してはほぼ唯一無二の方法です。そして、1980年代からずっと用いられており、その間、新しくでてきた治療法より優位性が確認されている治療法です。また、薬物療法とは相補的な関係にあります。

しかし、巷にはなかなか広まっていませんし、曝露反応妨害法をやる方も少ないですし、独学でやって諦めてしまうかたもいます。これは残念な点です。一番多い誤解は、「強迫行為を我慢しようと思ったができなかったので、認知行動療法は効果がない」というものだと思います。実際は、曝露反応妨害法が無効だったり、悪化する人は、ほぼ0に近いです。

 

以上、だらだらと書いてしまいましたが、このような不思議な点は、「なぜ治らないんだろう?」という疑問に応える重要なヒントだと思っています。これらの謎に対する答えが見えてくると、もう少し治療が上手くなるのかもしれません。

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