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ミソフォ二アとは

不快な生活音というのは、人によって様々ですが存在します。ガラスや黒板に爪を立てて引っ掻くような音を聞くと背筋がゾクッとするとか、近所の犬が吠える声がうるさくてイライラする、というような体験は誰もが経験していることでしょう。

 

しかし中には、人が目の前でくちゃくちゃと音を立てて物を食べているだけで怒りが込み上げてきたり、パソコンの操作音やタイピング音が聞こえてくるだけで言いようのない不安やイライラした感情が湧きあがってくるという人もいます。さらにそのような人の中では、人の咳払いや呼吸音を聞くだけで心臓がドキドキしたり、手足の震えや過呼吸といった身体症状を伴う強い恐怖や不安感を訴える人もいるのです。

 

このように、生活音や人の発する音を、単なる不快な音として聞き流すことのできない非常に強いレベルの恐怖や不安をかきたてる音として感じてしまう症状は、ミソフォ二ア(音嫌悪症)と呼ばれる疾患として知られています。

 

 

主な症状と引き起こされる問題

ミソフォ二アを患うと、嫌いな音に対して激しい感情や身体症状が現れ、その感情を抑制することによるストレスや、嫌いな音を回避するための様々な行動が起こすストレスによって悩まされます。症状を引き起こす主な不快音には次のようなものが多くあげられます。

 

・食べ物をクチャクチャと噛む音、すする音

・唇や舌を鳴らす音

・爪を切る音、爪を鳴らす音

・笑い声、いびき、げっぷ

・タイピングの音

・ペンをカチカチ鳴らす音

・咳、咳払い、くしゃみ

・イヤホンから漏れ聞こえてくるカシャカシャした音

・鼻歌、鼻を鳴らす音

・ある特定の子音を発する時の音

ほかにも、反復的に繰り返される音や机を指で叩く音など、生活の中で聞こえる様々な音に対して症状が現れます。

 

これらの音が聞こえてくると、筋肉が緊張し、発汗や心拍数の増加といった闘争・逃走反応が起こります。手足の震えや過呼吸が起こり、その音を出している対象に対して強い恐怖や苛立ちを感じます。悪化すると暴力をふるいたくなるほどの攻撃衝動や自傷行為にまで発展することも少なくありません。

 

これらの症状を回避するために、人と食事をすることを避けたり、イヤホンや耳栓をつけて対応しようとする人もいます。不快な音のする場所にいられないために職場や学校にいることが苦痛になってしまうなど、社会的な場面で不自由を強いられることになってしまうのです。

 

 

原因は生理学的なもの

イギリスの神経学の研究者によると、ミソフォ二ア患者とそうでない人にさまざまな音を聞かせ、その時の脳をfMRIによって分析する実験を行った結果、ミソフォ二ア患者は咀嚼音などの音に対して感情の処理や抑制を司る前部島皮質と呼ばれる分野が極めて活動的になっていることが分かりました。また、他の研究者からも前頭葉と前島皮質の間にある感情抑制メカニズムに異常が見られるのではないかという仮説がたてられています。

 

現在、ミソフォ二アはDSM-5には分類されておらず、はっきりとした治療法が確立されていない状況です。しかし、脳神経学や臨床心理学といった観点から、この疾患の原因や具体的な治療法の研究が進められており、認知行動療法やTinnitus Retraining Therapy(耳鳴り再訓練療法)が有効ではないかと言われています。

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カテゴリー: 恐怖症・嘔吐恐怖症